tips109 初めてのデジタル一眼(スーパーGレンズ)
   

 2008年10月のα900の登場で、実売30万円前後のフルサイズ機がニコン、キヤノン、ソニーの3社から出揃うこととなって以来、フルサイズモデル充実が普及に拍車をかけてきている今日この頃である。往年のフィルム一眼レフユーザーにとっても、長年お蔵入りしていた銘玉の数々に光明が指すこととなり、フルサイズデジタル一眼レフカメラへの転向組も多いと聞く。
 ところが、風景撮影などにおいては、全てのカメラメーカーやレンズメーカーが最もしのぎを削る70-200mm域の大口径ズームですら望遠側の焦点距離が不足することは否めず、70-300mmあるいは70-400mmのズームレンズの登場を心待ちにしていたユーザーも少なくなかったであろう。

 ところが2009年1月、SONYから70-400mm F4-5.6G SSMが発売されて以降レンズバリエーションの選択肢が広がることとなった。
 (フィルム一眼レフユーザーも含め)フルサイズユーザーにとって(高性能大口径)望遠ズームレンズの200mmより長い焦点距離は未知の領域、それが一挙に400ミリまで広がったわけであるから、いよいよ夢が現実味を帯びてきた。
 今般、カールツァイス「Vario Sonnar(バリオゾナー)T* 16-35mm F2.8 ZA SSM」と同時に発表された「70-400mm F4-5.6G SSM」を入手することが出来たので、志賀高原の「紅葉」を題材に、その魅力をリポートしてみたい。


<おさらい>
 手前味噌で恐縮であるが、筆者にとって200mm以上の焦点距離を持つ望遠ズームについては、これまで70-300mm F4.5-5.6 SSMという選択肢もあったが、最も使用頻度の高い70-200mm F2.8G SSMに比べて100mmほど焦点距離が伸びたに過ぎず、スペックから見ても触手は動かなかったのである。
 ところが70-400mm F4-5.6G SSMの登場で、望遠側が一挙に400mmまで広がりいよいよ現実味を帯びてきたる。
 これまで作品作りといえば、70-200mm(80-200mm)が使用頻度の約5割を占め、ついで16-35mm(17-35mm)が約3割、残りの2割を300mm、400mm、STF135mm、24-70mm(28-70mm)、100mmMACRO、16mmFisheyeといったレンズが活躍してきた。そこに70-400mmが加わることで、理想のレンズシステムが完成することとなりカメラライフも大きく変貌を遂げることと相成った。
 しかし、近場ではなかなか70-400mmを駆使する場面もなくお蔵入りすることが多かったものの、例年計画している志賀高原ツアー帯同させたところ思いもよらない(嬉しい)誤算が待ち受けていたのである。


<はじめに>
 「70-400mm F4-5.6G SSM」は、中望遠の70ミリから超望遠である400ミリ域までをカバーする35ミリフルサイズ対応の望遠ズームレンズで、レンズ構成12群18枚(うち2枚にEDガラスを使用した)の光学系は、色収差をしっかり補正し、ズーム全域でシャープな画質を実現している。
 レンズ本体にはSSM
(スーパーソニック・ウェーブ・モーター)を内蔵し、高速で静かなピント合わせが可能。さらにフォーカシングによってレンズの全長が変化しないインターナルフォーカシングの採用で、素早いAF駆動を実現している。
 外観は、超望遠系のイメージカラーとして新たに採用されたシルバーが施され、従来の白レンズから考えるといささか違和感を覚えなくもないが、最大径φ94.5mm、重量約1,500g(三脚座別)のバズーカ砲?を連想する、これまでに手にしたことの無い大口径のスーパーレンズである。
 ちなみにα900に装着すると総重量は2.7kg
(三脚座、バッテリー別)を超えるヘビー級となる。
 なお、ズームはテレ側にするとレンズが飛び出す形となるが、焦点距離が半端ではないので飛び出し方も半端ではない。
(フードを付ければなおさらに)

<70mm域>
<400mm域>


<スペック>
 中望遠70mmから超望遠領域の400mmまでをカバーする望遠ズームレンズ。EDガラスを2枚使用した光学系は、色収差が良好に補正され、ズーム全域にわたり単焦点レンズに匹敵する高コントラストでシャープな画質を実現。また、円形絞り採用による自然で美しいボケ味も魅力。さらに、レンズ内蔵のSSM(超音波モーター)とインターナルフォーカシングにより、迅速で静粛性の高いAFを実現。最大撮影倍率0.27倍で近接撮影にも威力を発揮。フォーカスホールドボタンやフォーカスレンジ切り換えスイッチなど操作性にも配慮し、スポーツや風景など幅広い撮影ジャンルで活躍が見込まれる。

レンズ構成 12群18枚
絞り羽根枚数 9枚(円形絞り)
最小絞り F22-32
最短撮影距離 1.5m
最大撮影倍率 0.27倍
フィルター径 77mm
フード 花形バヨネット式
大きさ・質量 94.5×196mm, 約1500g(三脚座別
その他の機能 フォーカスレンジ切り換えスイッチ
フォーカスホールドボタン



<撮影の舞台・志賀高原>
 標高1500mほどの丸池、蓮池から標高2300mの横手山山頂までの、高山性高原の志賀高原は10月の始め頃には、ナナカマド、ダケカンバ、カエデ、ミズナラ、ヤマウルシなどの広葉樹が色付き始め、中旬頃には例年すばらしい錦絵のごときの紅葉風景が見られ、山岳高原ドライブや大小70近くある池、沼のハイキングなど、すでに冷気の漂う高原での紅葉観光は自然の力のすばらしさを充分に堪能させてくれる。
 蓮池から熊の湯、横手、渋峠から白根、草津温泉コースと、蓮池から一の瀬、奥志賀、そこから奥志賀スーパー林道で秋山郷へ、又は野沢、カヤノ平経由木島平へのコースがあり、どのコースにもそれぞれの趣きがあり素晴らしい秋を満喫出来る。

<一沼>
<山田峠>
<蓮池>
<奥志賀高原>
<木戸池>
<平床>



<撮影のポイント>
 基本的には10月初旬から中旬が見ごろとされているが、今年のように「ナナカマド」などの赤葉系が9月末で見ごろを過ぎてしまったために代表的な見どころである「一沼」や「山田峠」などは回避し、黄葉系が中心となる「のぞき」とよばれる横手山中腹付近に当たる「穂原」や「平床」、「奥志賀高原」、「蓮池」、「木戸池」、「奥山田」をターゲットとしている。
 ただ、これも天候次第で趣がまったく異なるので、快晴ならまだしも、曇り空なら僅かな晴れ間や雲の切れ間から指す光を求めて移動することになる。つまり天候は時の運、神のみぞ知るのである。

 ひとつ注意しておきたいのは空の扱いである。青空に白い雲など、アクセントとして扱う以外は空を入れる必要はなく、望遠系のズームを中心にフレーミングしながら切り取っていく作業となる。
 たとえ曇りの場合であっても、
(本曇りでなければ)光が回っている場合が多いので空をいれずにフレーミングすることでコントラストや現像の際に光をコントロールできる場合があるので、じっくりと数多く狙っていただきたい。但し、日差しのあるなしでは立体感などが雲泥の差となるので、雲の動きに注意しながら撮影ポイントを移動したい。

 (作例1)
 早朝からの雨が霧氷に変わり、霧に包まれていた岩菅山の山頂部分ががほんの一瞬ではあったが顔をのぞかせた。
 三脚は立てたものの、固定していては間に合わないと判断し、運台に乗せてフレーミングした。僅か10秒足らず
(数カット)のドラマであった。
 テレ側400mmの威力が真価を発揮した瞬間でもある。

 志賀プリンスホテル東館前から岩菅山を望む
 【撮影データ】
  α900/70-400mm F4-5.6G SSM 360mm/F8 1/320秒 -3/10EV ISO200
 (作例2)
 午前中は曇天で撮影も出来ず、昼食後北方面の空から木漏れ日が指すのを確認。急ぎ奥志賀方面へ車を飛ばす。又七山付近に日が差し始めるのを確認してカメラを構える。
 ご来光ではないが、突如僅かな雲の切れ間から一条の光が指した瞬間をファインダーで確認しながらシャッターを押す。
 
(その間フレーミングを陽が指す方向に振りながら10カットほど撮影)
 作例1同様にラッキーとしか言いようの無いシャッターチャンスであった。

 奥志賀高原道路、平穏から又七山方面を望む
 【撮影データ】
  α900/70-400mm F4-5.6G SSM 400mm/F8 1/320秒 -3/10EV ISO200
(作例3)
 雲の切れ間からさす陽光を追いかけながら志賀プリンスホテル方面へ移動。しばらく休息をしたのち寺子屋峰方面に、西日が差し込むのを発見。三脚を準備しスタンバイに入る。
 白樺の林が斜光線を受けて輝く瞬間を狙う。スポット的に差し込む陽光はかなりきつく、立体的に捉えることが出来た。

 志賀プリンスホテル東館前から寺子屋峰方面を望む
 【撮影データ】
  α900/70-400mm F4-5.6G SSM 360mm/F8 1/160秒 -3/10EV ISO200
(作例4)
 相変わらず雲が多く日差しは安定しないが、西の空が少し開き始めたのを確認して、「一か八か」の賭けに出る。
 うまくいけば平床付近でいい場面が撮れるのではないかと、ダメ元で車を走らせる。
 現地に到着すると、なかなか日差しは回ってこない。少し粘っては見たものの「これまでか」とあきらめかけた時に光が回ってきた。「ラッキー!」である。
 白樺の林のみに陽光が当たり、西日を受けて光り輝いている様子を手持で撮影。背景の林に光が当たらなかったために、効果的な結果が得られた。

 平床から志賀山方面へカメラを振る(道路際の白樺林)
 【撮影データ】
  α900/70-400mm F4-5.6G SSM 90mm/F8 1/200秒 -3/10EV ISO200
(作例5)
 平床から車を走らせ、1日目の最後は定番の蓮池へ。ここでも運良く西日が当たり始め、ドラマティックな様相を見せてきた。
 三脚を据えて、ここは粘りながら強烈な光を待つことに。やがて水面に光は当たらなくなったが、池畔の白樺林に最後の西日が差し込む。アングルを変えながら撮影を始めるが、池を周回する歩道には観光客の姿がチラホラ。出来ればいなくなるのを待ちたいが、日差しはやがて坊寺山に沈んでしまう。ためらいながらも約30カット以上を撮影した。

 蓮池リフト乗り場への道路から蓮池ホテル東側へカメラを振る
 【撮影データ】
  α900/70-400mm F4-5.6G SSM 110mm/F8 1/160秒 -3/10EV ISO200
(作例6)
 2日目は好天に恵まれ、横手山の「のぞき」付近での早朝撮影を終えホテルに戻り、満を持して奥志賀方面へ車を走らせる。ポイントは志賀プリンスホテル東館前。昨日の霧氷が今朝もくっきりと見える。
 さまざまなアングルで相当枚数を撮影。
 作例は、青空に浮かぶ白い雲と霧氷、そしてスポット的に差し込む陽光とのコントラストを意識して撮影したもので、まるでおとぎの国を見るような印象であった。


 志賀プリンスホテル東館前から岩菅山を望む
 【撮影データ】
  α900/70-400mm F4-5.6G SSM  70mm/F8 1/250秒 -3/10EV ISO200
(作例7)
 熊の湯から県道66号線を走らせること約15分、笠岳から山田牧場へ道路上から俯瞰で撮影。
 ここは黄葉だけでなく、細かいながらも赤葉の混じるお気に入りのポイントである。
 約40分、
(晴天であっただけでも感謝しなければならないところであるが)雲の陰りを待ったが、そううまくはいかないもの。岐路の行程を考えて山田牧場への向かう。

 県道66号線より奥山田方面を望む
 【撮影データ】
  α900/70-400mm F4-5.6G SSM 120mm/F8 1/30秒 -3/10EV ISO200
 
(作例8)
 山田牧場での1シーン。牧場内には多くの牛が放牧され、道路を我が物顔にゆったりと歩く姿が、そこかしこに見られる。ここでは車優先ではなく牛優先である。
 牧場内の紅葉はまだ少し早く、斜面を振り返ると白樺林の黄葉がいい具合に。白い雲がいい位置に流れているのを見て、24-70mm/F2.8ZA SSMの広角端で撮影。
 青い空の白い雲をアクセントにして、斜面に生える白樺林。熊笹を最下部に配し、斜め構図の典型的なフレーミング。ローアングルで空に抜くために、サーキュラーPLで青空を強調している。

 山田牧場内にて(道路沿い)
 【撮影データ】
  α900/Vario-Sonnar T* 24-70mm F2.8 ZA SSM
  28mmF8 1/100秒 0EV ISO200

<参考>
 作例は、
(作例8)を除き、全てα900+ 70-400mm F4-5.6G SSMを使用。記録はcRAWで行い、AdobeLightroomで現像したものである。

 なお、掲載画像が小さいためにお分かりにくいかもしれないが、作例以外の画像も含め横幅900ピクセル仕立てのWebギャラリーを作成しているので、以下のリンクからご覧いただきたい。

 http://jr2uat.net/gallery/dsr-a900/siga/siga2009/index.html



<試写の印象から>
 とにかく、ファインダーから見える像は広く明るい。
 しかも、単に明るいというだけではなく、適度なコントラストを持っていて、ピントの山がとてもつかみやすいのである。これはカールツァイスやGレンズに共通して言えることである。
 次に重さであるが、「70-200mm F2.8G SSM」の1,340gに比べ、手にするとズッシリとした重さが伝わってくる約1,500g
(三脚座別)。α900本体+縦位置グリップと合わせると2.7kgをはるかに超えるヘビー級となり(但しボディとのバランスについては良好)、当初は手持撮影は殆ど不可能と考えていたが、かなりの場面で手持撮影したことを考えると手ブレ補正の恩恵に頭の下がる思いである。
 とはいえ、有効2,460万画素ともなると当倍で撮影画像をプレビューすると微妙なぶれも少なくない。やはり基本は三脚使用必須だと考えておいたほうがいいであろう。
 
 レンズ前部にズームリング後部にピントリングを備え、フォーカス切り替えスイッチにはAFとMFのほか3m-無限遠を切り換えるモードも用意されており、遠距離の被写体しか狙わない場合や、金網やガラスごしに被写体を狙う場合でもAF時間を短縮し誤動作を少なくできる。また、鏡胴の3カ所にフォーカスホールドボタンを備え、コンティニュアスAFの途中でもフォーカス動作をロックできる機構を備えている。
 レンズフード裏にはPLフィルター操作用のスライドドアが設けられており、今回の風景撮影などのように大半がレンズフードとPLフィルターを常時装着しているため、結構重宝する。
 ズーミングもピントリングも適度な重さで、微調整はとてもスムーズ。おまけに、AFは超音波モーターのSSM
(スーパーソニック・ウェーブ・モーター)なのでとても静かで、“スッ”とピントが合うのはとても気持ちがいい。
 操作系もさることながら、このレンズ超望遠レンズにも関わらず背景のボケ具合が自然なこと。ピントが合っている部分からアウトフォーカスにかけてなだらかにボケていくため、とても自然な仕上がりになる。また、周辺光量の低下に関しても絞り開放で若干感じられるが、作品作りにはまったく支障がない。しかも、直射光がレンズに入ってもほとんど影響はなく、Gレンズの冠は伊達ではないことを痛感した。

 ちなみに、筆者が今回の
(志賀高原紅葉)撮影に帯同させたレンズは「Vario-Sonnar T* 16-35mm F2.8 ZA SSM」「Vario-Sonnar T* 24-70mm F2.8 ZA SSM」「70-200mm F2.8G SSM」「70-400mm F4-5.6G SSM」の4本。
 撮影条件の違いはあったものの、今回の試写
(約900枚)のうち約9割が「70-400mm F4-5.6G SSM」であり、自身切り札と称している70-200mm F2.8G SSMは、結局一度も使っていない。
 結果として
(近景を除き)「70-400mm F4-5.6G SSM」1本で十分だということになる。恐ろしや「70-400mm F4-5.6G SSM」である。

 蛇足ながら、この「70-400mm F4-5.6G SSM」大きさもさることながら、高性能レンズだけに価格も立派である。とはいえ、同じGレンズの望遠ズーム「70-200mm F2.8G SSM」
(実売価格は31万8000円前後)と比べれば、開放F値はずいぶん違うもののかなり安い。本格的な望遠撮影ができるレンズを、よりリーズナブルに手にできるのはありがたい。重さを克服できるのならば、いっそ「70-200mm F2.8G SSM」は外して「70-400mm F4-5.6G SSM」という選択肢もありえるのかもしれない。それが「70-400mm F4-5.6G SSM」である。


<おわりに>
 これまで風景撮影といえば、近景を除き「70-200mm F2.8G SSM」「AF300mm F2.8G APO」「AF400mm F4.5G APO」を使用してきた。
 とりわけ、その大半を「70-200mm F2.8G SSM」で撮影してきたといっても過言ではないが、今回、その定説を打ち砕くこととなった「70-400mm F4-5.6G SSM」の威力に賛辞を呈さずにはいられない。

 うれしい誤算で幕を閉じた志賀高原紅葉撮影ツアーであるが、レンズもゴルフにたとえるならばクラブである。
 ショートアイアンからウッドまで、それぞれの能力と持ち味を生かすも殺すもカメラマン次第。
 そのためにも、いろいろな機会を通してお手持のそれぞれのレンズの、能力と持ち味を実感いただくことをおすすめする。